育児中の母親にかかる肉体的な負担は無視できない、そうとうなものがあります。
しかし母性のスイッチが入った状態では、我が身のことは一切省みず、
昼夜を問わず赤ちゃんに全力でエネルギーを注ぎ込むのです。
出産は事故に例えると全治3〜4ヶ月の重症と言われています。
本来ならまだベッドで点滴をしている状態の体で、特に初産の場合には
暗中模索の状態で新しい生命体と向き合い続けなくてはいけないのです。
当然、体には支障をきたします。
カラダ全身の整合性が狂っている、腰が痛い、首も痛い、背中が張る、膝が痛い、
そして手首も痛い。。。
この手首の痛みが実に厄介なのです。
首の座っていない赤ちゃんの頭を支え、脇に手を入れて持ち上げる、
ある時から親指の付け根に痛みが、ひどくなると腫れが出現してきます。
これは腱鞘炎の中の「ドケルバン症候群」とよばれるものです。
腱鞘炎の原因は使いすぎですから、2週間育児をしなければ治るのですが、
それはありえません。よって抱っこの物理的時間が減少する約11ヶ月までは
痛みが完全に失くならない場合がほとんどです。
しかしこれは指だけの問題ではなく、肩甲骨間のツボや、首、肩から腕の筋肉など
多くの部位が関連しているので、親指に起こった炎症自体も、その周辺関連部位を
調整することでかなり緩和できるのです。
また、とても効果的なのが、親指用のサポーターです。
いいやつがネットで買えますからお尋ねくださいね。
以下、公益社団法人・日本整形外科学会のHPより転載いたします。
母指(親指)を広げると手首(手関節)の母指側の部分に腱が張って皮下に2本の線が浮かび上がります。ドケルバン病はその母指側の線である短母指伸筋腱と長母指外転筋が手首の背側にある手背第一コンパートメントを通るところに生じる腱鞘炎です。
症状
手首(手関節)の母指側にある腱鞘(手背第一コンパートメント)とそこを通過する腱に炎症が起こった状態で、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側が痛み、腫れます。母指を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い疼痛が走ります。
注:短母指伸筋腱は主の母指の第2関節を伸ばす働きをする腱の1つです。
長母指外転筋腱は主に母指を広げる働きをする腱の1つです。
①短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)
主に母指を伸ばす働きをする腱の一本です。
②長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)
主に母指を広げる働きをする腱の一本です。
③腱鞘(けんしょう)
①と②の腱が通るトンネルです。
原因と病態
原因
妊娠出産期の女性や更年期の女性に多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのが特徴です。
病態
母指の使いすぎによる負荷のため、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷んだりして、さらにそれが刺激し、悪循環が生じると考えられています。
特に手背第1コンパートメント内には、上記の2種類の腱を分けて通過させる隔壁が存在し、これがあるために狭窄が生じやすいです。
治療
局所の安静(シーネ固定も含む)、投薬、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)などの保存的療法を行います。
改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く手術(腱鞘切開)を行います。その際、隔壁の切除と橈骨神経浅枝の愛護的操作が求められます。