●特別講義1 『無痛分娩とマタニビクス』医学博士 田中康弘先生

c4_3_pic01  鈴木登士彦:おはようございます。
今日は特別授業です。田中康弘先生にお越しいただきお話を伺います。
先生は無痛分娩とマタニティエクササイズを広げる活動をしておられます。今日はその無痛分娩と妊婦のエクササイズについてお伺いします。それでは田中先生、よろしくお願いいたします。

田中康弘先生:私は昭和48年に自由が丘の駅の傍で産婦人科を開業いたしました。私のHPを見るとわかるのですが、「人間は初期ほど大切」だというのが私の信念で、「初期」というのは、実は生まれたときじゃなくて「受精卵が着床したときからが初期」だというのが私の説です。
私は女性のための「抗加齢医学研究会」という学会を7年くらい前からやっているのですが、「抗加齢」というと高齢者の医療みたいに思うかもしれませんが、「抗加齢療法」はむしろ若いときほど効果が高いのです。

胎児時期に母親がどういう生活をしていたか、というところが一番大事なのです。たとえば胎児に手術しても、生まれたばかりの赤ん坊が骨折してもきれいに治りますよね。傷跡は残りません。70才になったらなかなかつきません。初期ほど大切ってことを皆さんに知ってもらえると嬉しいです。

私が産婦人科医になったとき、妊娠すると安静にしているべきというのが従来の考え方でした。流産は振動によって起こると間違った考えできていたのですね。だから妊娠したら毛布に包まってじっとしているのがいいという考えでした。

昔は栄養がとれませんでした。しかし今は栄養がたくさんあります。
栄養ばっかりとって動かなくなった。肥満妊婦が増えて、難産や妊娠性高血圧症が非常に増えた。

当時私は物好きで、医者とは全くはなれたところで、人間だけが評価されるようなダンスの世界にあこがれましてね。モダンダンスを習いにいっていました。それで近くの小学校の体育館で近くの主婦を集めて、体操指導していたんですね。お産が終わって駆けつけるんですが、でも、肥満妊婦のお産の時には間に合わない。やっぱ肥満妊婦はお産に時間がかかって、やっぱり運動した方がいいなと思いまして。そんなこんなで、だんだん「妊婦に運動が必要だ」という想いが芽生えてきたんですね。これが昭和56年です。

その頃はフィットネスクラブもありませんでしたから、私のスタジオは日本で一番最初に出来たフィットネスクラブのスタジオでした。
で、「奥さん妊娠していますから運動してください」という。目が点になって口ぽかんとあいて「えー?」って。この先生はとんでもない、妊婦を捕まえて運動しろという。だから患者さん逃げちゃった。
それでも運動した方がいいといって中に物好きが居て、先生がいうんだから、どうにかなったら先生がどうにかしてくれるだろうと信頼してくれたんですね。最初は2~3人でやっていましたが、どうも心配だって帰っていっちゃって。ご主人のお母さんの反対にあって、できませんという人もいて。

だんだん妊娠中に運動した妊婦さんが「妊娠中楽しかった。お産がラクだった」という声が口コミでね。結局今日までに30年近く掛かっちゃったですね。その間私は関東中央連合部会という産婦人科学会に「妊婦の運動療法」というので、7年間運動群と非運動群にわけて、出産の時間や赤ちゃんの元気さなどのデータを発表して、やっと産婦人科学会の上層部も、「少し運動した方がよさそうだ」とわかってくれました。

そして平成4年に私は教育を頼まれて「妊娠中の運動療法」というのを産婦人科学会に発表しました。当初、私の主張で学会発表していたときに動いてくれない産婦人科学会もやっと認めてくれたことになります。そのくらいかかりやっと認めてもらって。それでも未だに、安静でやってきたからこれでいいというお医者さんもたまにはいますけどね。

学会に発表しても学会にくるのは勉強熱心なお医者さんですからね。
そんなに広がらないわけですよ。そしてまぁこの時点まで少しずつ広がってきまして。今は筋のいいのをインストラクターに指名し、どんどん増やして、年に4回くらい認定試験を行っています。

しかしスタジオが狭いもので、一回25人程度、年間100人くらいしか増えない。でもやっと全国で2500人の認定インストラクター、登録施設が550くらいになりました。でも日本全体でみるとほんの少しなんですね。お産が110あったうちのやってくださったかたは10万人くらい。だから10%くらい。2500人・500施設といっても全国です。まだまだです。その代わり地道な努力で確実に広がって、妊娠中は適度な運動がいいってわかってもらえたので。完璧に広がってくれるといいと思っているのですけどね。

今までは認定インストラクターを養成する日本マタニティビクス協会だったのですが、これからは妊婦さんと子育てを応援しようって言うので、年に一回イベントやっています。来年4月12・13日、横浜パシフィコで「マタニティアンドベビーフェスタ」っていうのでね。3年前にもやりました。妊婦さんを3000人集めようって。7800人くらい着たんですね。ブースを出してくれた企業の方が是非来年もといってくださった。そして、去年は横浜パシフィコでできましてね。そして、やっぱり7~8000人狙ったら12000人くらいいらっしゃった。

でまたそのブースを出した企業が是非来年も、というので。今年もやりました。パシフィコのCホールがいっぱいになって危険だというので入場制限したんですね。入場するのに2時間待たされて物凄いクレームが着ましてね。嬉しい悲鳴のようですけど。やっぱり妊婦を二時間立たせたって物凄く批難されました。来年はCDホールをかりて2倍にしてそういうことのないようにと思っています。見込み来場者数は2~3万人です。若いカップルが2万集まると活気が凄いですね。

c4_3_pic02 ○みなさんは、恐怖のどん底から助かったとき、何をしたいですか?
世界中でも日本人だけが答える共通の答えというのがあります。
なんだと思いますか?

それはお風呂です。

生まれてからお風呂にすぐ入れられたことがどれだけ影響しているかっていうことですね。物語の中でも母親が産気づくと「そら! 湯を沸かせ!」ということになります。つまり日本人の赤ちゃんは生まれてから毎日お風呂にいれてもらえたのですね。

そんな国他にないんですよ。つまりね、羊水の中にいた快感を日本人だけが毎日毎日味わってるわけですね。だから日本人はピンチの後助かってほっとして、お風呂の中でもう一回ほっとするのですね。
生まれてからお風呂にすぐ入れられたことがどれだけ影響しているかっていうことですね。

もちろん生まれたてで毎日お風呂に入れられたことなんて覚えてない。それでも影響はあるのです。生まれてから人生を終えるまで数回しかお風呂に入らない民族も居ます。そういう人たちの口から「ほっとしてお風呂に入りたい」とい台詞は出てきません。

初期ほど大事、ということがこれでわかると思います。
物凄く色濃く出てくるのです。昔は三つ子の魂百までといいまして、3歳までの経験が人生に大きく影響すると、経験的に知っていたのですね。でも、最初の3年より3ヶ月、それよりも1ヶ月、それよりも生まれた直後。早ければ早いほど影響は濃いわけです。

先ほどもちょっと言いましたように、初期ほど大切。
胎児のときから大事なのです。
おなかの中に居るときに、両親がどんな生活をしていたかというのが大事です。

受精卵が胎芽になったとき、だんだん胎児になっていく。最初はえらがでてくるんですね。それがあごになる。進化の過程を最初の数週間でなぞるように成長します。妊娠13週目で人間のようになります。最初は人間も魚も牛もわかりません。だんだんそれぞれの生き物の特徴が出てきます。

猿は16週目でも人間とほぼかわりません。なぜって98%近くの遺伝子が一緒なのです。違いは、親指の発達の有無くらいで、手の発達がいかに脳の発達に影響するかということです。

おなかの中でも人間の赤ちゃんはへその緒をくわえてみたり、笑ったり、あくびしたり、いろいろなことをします。

進化の過程で、人類は二本足で動くようになりました。立ち上がって日本の脚で歩きますと、前足が手として使えるようになります。その結果知能が発達し、結果頭が大きくなっちゃったのですね。
それで人類は難産になりました。

人間も豊かな食物に囲まれていたときは木の上に居てよかったんですが、あるとき地形が変動して南北に高い山脈ができたんだそうですね。これはアフリカの話のようですが。西から雨雲が来て、森林を育てて食料が豊富だったのですが今度は山脈の東側は雨がこなくなった。森林がサバンナになった。サバンナは食料が少ないですね。だから人間も木から降りて獲物を追いかけなくてはならなくなった。
そういう個体が生き残るようになった。

瞬発力を使って獲物を追いかけても逃げられるんですね。だからグループで発達した知能を使って作戦を練った。ゆっくり追跡して弱ったところをしとめるほうが生き残る確率が高くなった。二本足でたって遠くを見る目を持って、いわゆる狩猟生活が始まったわけです。こうして集団で獲物を追跡して生きていくという生活から今の人類が誕生したんですね。それぞれの生き物も、同様にして進化しているわけです。

そして、二本足で立つことで骨盤にしわ寄せが行った。出産に与えた影響は子宮の倒立です。びんの口のようになっている子宮口が下を向いた。時期を迎えると口が広がって赤ちゃんが出てきます。

牛や馬のあかちゃんは成獣と同じ機能を備えて生まれてきます。うまれてすぐ立ってお母さんのおっぱいを吸いに行きます。人間の赤ちゃんはあるいておっぱいを吸いにはきませんね。しかたないから寝ている赤ちゃんを傍に抱き寄せておっぱいを与えました。

ほっとけば死んじゃうんです。物凄い未熟児で生まれて来ると思いませんか?

人間の赤ちゃんは1歳頃になりませんと歩いてお母さんのおっぱいをさわりにはきません。そこでようやく成獣と同じ状態になります。

どうして人間だけ未熟児で生まれるか?
お産は自然の営みで、生理現象だといいますがとんでもない話です。
ひとつは物凄い早産であること。
ひとつは子宮低が上、子宮口が下。ひっくりかえっているということ。ですから重みがつくと重みで赤ちゃんは子宮口を押すので早産になりやすい。早産でなければ生き残れなかったのですね。

骨産道と軟産道というのがあります。二足歩行で骨盤が変形しまして、入り口は横長なんですね。出口は縦長です。そしてカーブしている。必ず一定ではないので、赤ちゃんは時期が近づくと骨盤に降りるために横を向いて屈曲します。これが第一回旋です。

次は90度回転してお母さんの背中を向くようにして出口に近寄る。これが第二回旋です。

そこで子宮収縮に押されると出てくるわけですが、みなさん後頭部に頭頂結節という出っ張った骨があります。でっぱりがある赤ちゃんが100、ない赤ちゃんが100いたとします。無事に生まれてくるのは、出っ張りのあるほうが80、ないほうは20くらいになります。
ずーっと繰り返されると、口頭結節のないあかちゃんはほぼいなくなります。なんでここにでっぱりがあるかといえば、出てくるときにひっかかりにして首を反屈して出てくるんですね。一番最小の断面積で出てくることが出来るのです。これが第三回旋です。

これで一番出にくい頭がでてきます。肩がよこでは縦長の出口を出られないので。肩をひねって出てきます。これが第四回旋です。

曲がりくねった道を4回旋して赤ちゃんが出てきます。いかに大変かがわかります。デカ頭で子宮口を圧迫するので早産になるのです。

なぜ出か頭になったかといえば、知能が発達したからです。脳神経が非常に肥大した、直立して子宮がひっくり返った。これが人間のそもそもの難産の原因です。
c4_3_pic03文明の影響は知能が発達して頭がおおきくなっちゃった。大きいほど大変ですからお産のときは恥骨結合や靭帯、筋肉がやわらかく伸びます。だから年齢がものをいいます。
20台前半はよくのびます。
30台でそこそこ伸びます。
40台だとほとんど伸びませんから、帝王切開が多くなります。

今は高齢出産が大変多く、そろそろうまなきゃと思ってと40歳頃の方がみえます。おんなじ見通しでも、20台の人は予測よりいいほうに、40台の人は悪い方に傾きます。それくらい違う。骨盤の開き具合が違います。

産道の通過性は大事です。早産過ぎると未熟児ですよね。未熟児性と通過性は、お産に関して相反するせめぎあいのポイントです。一方によければ一方に悪いわけです。未熟児性をカバーしようと1歳くらいまでおなかの中にいたら、産道を通過できっこないんです。死んじゃいます。

逆に妊娠6ヶ月くらいで早産しても赤ちゃんは助かりません。
でも、産道は通ります。出てきた後は大変ですが。なるべくお腹で育てた方がいい、けど、大きすぎると出し切れない。ちょうど一対一の部分で生まれてくる人ほど生き残れるのです。だからお産は大変。

産道100に対して、赤ちゃんの頭が102の人、98の人、まちまちですね。98の人は上手にやれば赤ちゃんも元気で裂傷も起きない。
逆に105だったら、どんなに上手にいきんで筋肉をやわらかくしても、絶対はかわらないわけです。裂傷します。だからきらなきゃいけない。恥骨結合が痛んで産後歩けなかったりする。赤ちゃんが生き残る代わりに母体が損傷する。人間のお産は100対100。100%の仕事なんですね。

生理現象では100%の力なんて使いません。だからお産は生理現象じゃないんです。年間5~60人くらいなくなります。生理現象では人は死にません。でもお産で死ぬ人はいっぱいいるんです。

世界で見たらこの数値はとても低いものです。世界で一番母体の安全な国は日本です。江戸時代では1000人に5~60人が亡くなっています。今でもバングラディッシュでは1000人に50人はお産で母体が死んでいます。統計がうまくいってないだけで、本当はもっとなくなっています。1000人に50人てことはですね。100万で50000人なくなるわけです。今日本は100万強のお産があります。それでいえば年間五万人の母体死亡があるわけです。みなさんの友達で出産時になくなったお友達がいてもおかしくない数値です。本人が慎でもおかしくない率です。でもみなさんのお友達でお産でなくなったかたいないでしょ?日本では100万で50人くらいしかいない。
でも一人でも死んだら生理現象とはいえないんです。
60人しか死ななかったって胸張っているんですね。

お産がいかに大変か。お産が自然の営みであるというのは間違った考え方だと僕は思います。

生理現象だって云っちゃったら医者の首をしめることになります。何かあったら医者のせいになっちゃう。馬鹿いっちゃいけない。どれくらいベスト尽くしても無理なことはあるのです。お産て云うのは100%を超えた現象ですから当然です。

たとえばみなさんおしっこを我慢して我慢してようやくトイレにたどり着いた場合、あなただったらどれくらいのおしっこをためていたと思いますか?膀胱の機能のいいひとで大体限界で400cc。300ccくらいで普通は限界です。

しかし麻酔掛けて膀胱にどれくらい入るか試してみると1200ccくらい入ります。お産のときに膀胱麻痺っていうのが起こります。そういうときに助産師がダメだと1200ccたまったりします。膀胱の最大は2000ccはいります。でも400ccで出せ出せとなるわけですね。

最大能力があっても、20~30%で留めるわけです。機能的余力として残しておく。これが生理現象なんですね。

筋肉も同様で、48キロぐらいなら軽く持ち上げられますね。
あなたの腕を輪切りにすると、だいたい20平方センチメートルくらい筋繊維があります。1平方センチメートルで5キロくらい持ち上げられます。全筋肉が収縮を起こしたら、120kgくらいのものを持ち上げることが出来る。両方で240kg。そういう筋繊維を持っている。だけど全部収縮しません。やっぱり2~3割です。3割で頑張ると、もう持ちたくない。目の前に一億円つまれて、もちあげたらこれあげます、ということになったら、もしかしたらあなたは全筋肉を使って持ち上げることが出来るんです。火事場の馬鹿力といいますが、実際ありうるのです。火事の際に200kg金庫をかついで逃げた女の人の話がいっぱい残っています。それでも、沈火した後に持っていけるかというともう持てないわけです。これが生理現象です。余力があるわけです。

お産の際に、あまりの痛みに青竹を握りつぶした話というのもあります。それだけ筋繊維を持っている。あまりに異常なインパルスが来ると、普段使わない100%の力が出て、青竹がつぶれる。内臓の機能も、いつも90%くらいで動いていたら、たちまち死んじゃうわけですね。普通は全部、20~30%です。だから腎臓は片方でも大丈夫。肝臓は癌で80%で生きてられる。

余力のあるのが生理現象。お産は余力ありますか?
100%超えたら切らなきゃいけない。皮膚の進展能力を超えている。
あなたの頬をひっぱってみてください。最大痛いところで30%。
誰かが両方でもって引っ張って、切れたらそこが100%。お産のときは切れうるのです。誰も裂傷がなければ生理現象でいいと思います。生理現象なら、切らずに出してみろと思います。

筋繊維は20代で19gで切れます。20代中ごろで代で15g、40代は12gで切れます。だから高齢のお産は危険なのです。骨盤も広がらない。だから大変。23の人ならギュワンと伸びますから余裕があります。20~24までは安産になる。25~29まではまあまあ。30~34までは努力すれば安産になる。35~は努力しても安産にはなりにくいのです。仕方がない。

だからなるべく早く生んで欲しいんですね。でも今は高齢出産ばかりです。高齢出産というのは30代からを云うのですが、そうするとみんな高齢出産になっちゃうから、今は35歳以上を高齢といいます。

でも、人間の身体は2000年くらいじゃ変わらないわけですよ。
高齢者ほど努力しなきゃいけない。その努力で一番効果が高いのが運動だと僕は思っています。一生懸命やっても効果がないのはやりなさんな。一番効果が高いのは運動だ。それは僕の信念です。

これは私が発見して。日本ていうのは和の世界ですね。均等におちこぼれがでないように話し合って…という談合の国です。昔からやっているんですね。なくならないと思います。学会もそうです。大先生を中心とした説をこれはよいこれはよいとやっているのを無視して、全然違うことをやっていると出る杭は打つって言うんで評価してくれないんです。私も世間への売名行為だ! なんて叩かれました。妊娠中に運動しろっていうんです。偉い先生は安静をという。
いろいろ言われました。学会の流れに乗らずにやった新しいことは評価されないんですね。なんだか自分のことばっかりですが・・・。

妊娠するとおなかが膨らみますよね。でもおなかだけじゃなくて、おしりも膨らみます。お尻とおなかの最大周径が同じになったときが出産のタイミングだということを僕は気づきました。

おなかは大体94センチくらいになります。おしりも大体95センチくらいになります。15年位前に気づいて学会で発表しましたが、誰も評価してくれないんですね。メジャーだけあればわかるし、大掛かりで高価な機械もいらないし、これはいいと思ったんですが、学問というのは大掛かりな機械と検査でもって出たデータならまだしも、メジャーだけではかる数値を相手にしてくれないんですね。
最先端の学問であるような感じがしないわけです。

ところがそうじゃないんです。痛い思いをして血液検査でややこしいことをやるのと、メジャーでおなかとおしりをはかると、精度は同じなんです。だったらお金もかからないし、痛くもないほうがいいと思いませんか?今は手で計っていますが、ボディランスキャナーっていうのが出たのでそれを貸してくれたら、やっぱり100対100になるんだって。みんな認めてくれると思います。自信を持っているんです。

話を戻して、運動は早産を予防するという話です。おなかって30週くらいに張るんですね。で、早産が心配だから入院する。で、張りが取れたら退院させればいいのにさせないんですね。一ヶ月も二ヶ月も入院させる。よくあるのです。
この頃になるとよくおなかが張りますが、それが即早産というのは僕に言わせると違うのです。それなのに予定日まで入院させておくと、精神的に物凄く鬱屈してくる。

安静にすると身体のすべての機能がダウンするので、分娩機能もダウンする。30週くらいで早産しそうだったら、予定日がきたらツルンと生まれそうですよね。でも生まれない。
予定日でも陣痛が来ない。薬で促進しても微弱で、産後も収縮が悪くて出血が止まらない。ひどければ帝王切開になる。
30週で生まれそうだったものがなんで帝王切開なの? と思うわけです。医者に、持ち直しましたなんていわれてごまかされているようじゃね。おかしいんです。

これは安静による運動機能の低下の難産なんです。いかに安静がよくないかということです。

僕の認定インストラクターのところには、お医者さんもきますし、助産師さんもきます。半分はジムのインストラクターで半分が医療関係者です。26年やっていてようやく運動療法が広まってきました。
難産が減ってきたという実感が出てきたんですね。

初期の、運動は早産を誘発するから安静にというのが間違っていることなんだとやっとわかってきたのです。僕がマタニティビクスを始めて2~3年してから、超音波が発達して、おなかの中がよく見えるようになった。運動したって安静にしたってダメなものはダメだっていうのがわかった。そして運動したからダメってことはない。
私の信念が正しかったとこのときにわかったのです。これは検証されている事実です。

初期の流産は関係ない。切迫早産は運動で予防できるというのもわかった。私がスタジオ作ったときは、20年位前で、自分はやりたいけど親が反対するという人が多かった。運動郡と非運動郡にわけた。
運動郡はあんまりおなかが張らないんですね。30週目で。非運動郡は30週くらいではった張ったっていう。実は運動郡も張っているのにはってないと思うのか、本当にはらなくなるのか。どっちだと思いますか?運動せずに内向しているから張ったことが不安になって張ったと騒ぐのか。どっちだろう?

ということで私が見つけましたのはPTHrP(副甲状腺ホルモン関連物質)というのがあります。いろんな薬理作用がありまして。骨吸収に作用する副甲状腺ホルモンなんですね。骨っていうのは常に代謝してるんですね。吸収のときに使われるホルモンなんですね。

それには平滑筋の収縮を抑える作用があるんですね。平滑筋ていうのは何かわかりますか?人間の筋肉には3種類あります。心筋と骨格筋と平滑筋(不随意筋)ですね。これは止まれと命令したりできない筋肉です。

内臓の筋肉は平滑筋です。子宮も一緒です。妊娠すると大量のホルモンが平滑筋の収縮を抑えるから早産しない。ホルモンのおかげなんです。

収縮を抑えると共に胃腸の蠕動も押さえるので便秘になります。
平滑筋を抑える物質が運動によって抑えられたらどうなります?
おなか張らなくなりますよね。出産直前にはこの物質が増えます。
38週目くらいから急に増える。残りの2週間を早産させないようにうんと増えるんだと。

このPTHrPが一杯増えたら、おなかのはりは押さえられますよね。
ちょうど38週に入りますと、運動郡はPTHrPがとても多いんです。
だからおなかの張りがとてもよわい。これで僕の意見が検証されたことになります。やっぱり運動や振動で早産しない、ということです。みんなはったはったって入院させても意味がないんです。

だからうちには切迫早産は居ないし、1週間以上の入院もありません。
それ以上だと、安静のメリットよりデメリットのほうが多くなってしまいます。うちの方針です。

子宮口が広がって子宮頚管無力症になっても一週間以上入院させない。みんな運動しているので早産はいません。検証された事実になっています。

2000年頃、早産は感染によっておこるという研究がいっぱいおこりました。膣炎が頚管炎になり、弾幕炎になると早産になります。
感染が早産をおこすのです。運動は、感染症をおさえ、免疫を高めます。おなかのはりをとると同時に感染を予防、つまり、早産を二重に予防します。

いいとこどりなのです。
私の研究を認めてくれる先生も増えました。
細菌性膣症にかかったとしても、膣内の善玉菌が多ければ感染を抑えられますから。体力がなければ乳酸管菌が追い出されて、雑菌に負けてしまいます。これでおきる炎症が早産の引き金です。

さて、なんで運動して大丈夫なのかといいますと。人間とは全身的持久運動をする生き物です。昔から、身体を動かして獲物を獲ていたのです。これは有酸素運動です。

体力というと、全身持久力をさします。防衛体力などもそうです。
温熱への体力、細菌に対する抵抗力。いろんな体力もあります。
瞬発力もそうです。

でも、人間は追跡する生き物です。妊娠しても走っていたんですね。
でなきゃ自分だけ安静にしていたらおいてきぼりです。

妊娠してても走る。妊娠して走って悪いことは何もないのです。
妊娠したら走れといわれて、えーっという妊婦さんは多いです。

また、運動してます、という人も居ます。公園を2~30分歩いているという。これは全然意味がありません。老人のようにまったく動かないような人には効果があります。負荷がかかりますから。

でも、あなたがたのような健康で若い人は背中に汗をかくような走り方をしなければ負荷がかからない。意味がないんですね。何にもなりません。

公園を一時間歩くなら、40分走ってください。
途中で息があがってくるしければ、落ち着くまで歩けばよろしい。

何か問題があれば私が面倒を見ます。ゆっくり走ればいいんです。
その繰り返しで40分。それを週に3回やってください。

そしたら、マタニティビクスを週に2回やった効果があります。
ちゃんとやれば、どんな人でも1ヶ月で40分間走り続けられるようになる。汗びっしょりです。
もっとと思えばスピードをあげればいい。わが先祖は走っていたんです。

原始時代のお産は大変だと思います。多分半分は死んだと思います。
大変だったね、と一日くらい休んでいたかもしれません。
でも、3日も4日も休んでいたら獲物がみんな逃げて家族が飢え死にします。
ほら行くぞ! となったときに赤ちゃんを担いで走れたものだけが生き残って今いるのです。

だから、走れていた。出来る人が今ここにいて、妊娠中に走って悪ければもういないわけです。妊娠して走ったら早産する人は何百年も前に淘汰されて今いないわけですね。走っても大丈夫だったから今生き残っているわけです。それは検証された事実です。

マタニティビクスは、毎週毎週やっていただきたい。出来れば週に3回くらい。健康な人は週に一回やれば健康維持です。
平行線。お年寄りや肥満の人、身体活動のない人はこれで。

でも、普通の健康な人は週に二回からで負荷がかかって効果がでます。もともと運動をなさって、体力のアル人は3回くらいやってほしい。

もしオリンピック選手みたいな人だったら、週2回じゃ維持にならない。週に3回くらいやってようやく健康維持です。
赤ちゃんの運動神経をよくしたければ週に2回はやってほしい。

このうちで生まれた赤ちゃんが大きくなってダンスを始めて踊っているわけです。映像の中の彼は14・5歳です。このお母さんはこの子が生まれる10年前に、20代後半に一回うんでいる。10年くらい経って40歳のときにこの子を産んだ。とにかく、安産のために100回でもやりなさい、といいました。帝王切開を避けることができるぞ、と。彼女は自発的にどんどんやりました。そして、高齢出産の年齢で、80回以上やったような状態でこの子を大安産で生んだ。
そしてこの子はダンスが好きになりました。
ダンスの選手になってイギリスに行って賞を取る活躍ぶりです。北京オリンピックからダンスが入るとなって、強化合宿に最年少12歳で入ったんですね。しかし、中国ってずるいでしょ。自分のとこにいい選手がいないということで、北京オリンピックのダンスはナシになってしまいました。次のオリンピックは必ずダンスが入る。だから、彼は絶対に出るんですよ。現在最年少だから。
彼のほかにも、いろいろな分野で、お母さんがマタニティビクスを経験して生んだ子どもが活躍しています。ただ、頭がいいかはまだちゃんと証明されてない。あと、15年くらいして、誰かがノーベル賞とったら証明されますが、その頃生きてればいいんですけどね。

まあ私幸せなんですよ。うちの病院で生まれた赤ちゃんが各方面で頭角をあらわしてくるに違いないと信じて生きて、自分の仕事に生きがいを感じているわけですからね。この子も多分、オリンピックに出ます。お母さんに、ゴールドメダルが取れるといいですねといったら、「日本でいくらうまくてもダメです。シンクロも、技術はいいけど見た目が悪いと金とれないじゃないですか。イギリスはダンス競技人口がとても多いし、技術が上でも見た目も大事であるからなかなか金は取れないと思います」とのことでした。

妊娠中運動すると、知能、体力、運動神経があがる。というのは検証されていますから、信じてやってください、と言っています。
信念だけじゃないです。
でも、検証は難しい。

検証しにくいのは。現在非運動郡がいないということがあります。
運動しないでください、とお願いしても、「ダメなほうにまわりたくありませんよ」ということになる。
じゃあうちは運動群、よそは非運動群としただどうだろう?
これはこれでまたダメで、同じ集団でなければ、使えないのです。
うちにくるカップルの能力がもともと高いのかもしれないですから。
それを比較したって何もなりません。
ですから、この子達がだんだん成長して頭角をあらわしてくれれば、証明になります。

うちで生まれた赤ちゃんについて、よく言われるのが、「私は音痴だけどうちの赤ちゃんは音感もリズム感もいい」というものです。
このダンスの子も、リズム感が抜群だという。イギリス人にも負けない。だから、日本人がリズム感・音感が悪いわけじゃないんです。
我々が若いころ、日本人は音痴が多いといわれましたが、そういう生活をしていたんですよ。だから、日本人でもリズム感が悪い人ばかりではないとこの子は証明してるわけ。本当は音感もリズム感もいいんです。妊娠中に運動すると、音感・リズム感が養われる。その次が、病気をしない、丈夫だという意見。頭がいいのかはもう少し先です。うちで生まれた20歳くらいの子は、そうそう。うちで生まれた赤ちゃんが出産に来るようになりました。もう少しすると、頭がいいかもわかると思うんですが。

で、大学生です。といわれ、どこですか? と訊くと、東大の医学部です。というのをいっぱいきく。やっぱりね、運動したらいいんですよ。そのうち証明されると思います。これからのかたは是非運動して欲しい。

全身持久性運動は分娩能力も高めます。
弛緩性出血が少なくなりますし。
(後半)
★無痛分娩★
NHKスペシャルで、以前うちで生まれた赤ちゃんが主役になりましてね。一昨年の6月に生まれて、知能と運動発達を去年6月まで一年間追いかけていくというので。主役で。うちで生まれた赤ちゃんたちいっぱいでてくるんですけどね。脳と身体の発達というテーマです。

それから3チャンネルで脅威のなんとかっていう赤ちゃんの能力。12月の23日にはまた別の赤ちゃんの番組がありました。結局、妊娠中のおなかの中の赤ちゃんの動きをいろいろみるんです。赤ちゃんはおなかの中でいろいろなことをしていて。いろんな能力を持って生まれてくるんですね。

で、最初の3ヶ月間を父親がいかに赤ちゃんと接するか、親子の絆を作るのに重要化というのをいっています。できるだけ触ってあげてください。具体的にどうしようという場合、触って欲しいんです。

お母さんにベビーマッサージを教えて、旦那さんに教えてあげて、やってもらう。これが大事なんです。

赤ちゃんは凄い能力を持っている。すやすや寝ているんですね。
そこにいろんな先生が出てきます。赤ちゃん研究の人たちが。
本当は1時間の番組なんですが。

赤ちゃんに向かってナレーターが昔むかしあるところに…と話しかけると、言語野が赤く光るんですね。前頭野も動きます。理解しているんですね。

で、そのテープを逆回しにすると光らない。その頃の赤ちゃんって言うのはあらゆる言語を聞き分けるだけの能力を持って生まれてくるんですね。ところが日本人はRとLの発音の区別がつきませんよね。
それは成長するにしたがって、聞き分ける必要がないからなのです。
韓国語の中には2種類の「ウ」があるそうです。それも日本人は聞き取れない。でも赤ちゃんは聞き取れます。言語野が赤くなる。
片方のウを聞いていると赤くなるけれども、連続するとそのうち聞き飽きて、光らなくなるんです。しかしまた、もう一方の「ウ」を発音すると、言語野は赤くなります。つまり、あらゆる能力を聞き分ける能力がある。ただ、だんだん使わない部分は能力がなくなる

生きていくうえで必要なものだけを残してあとは失われていくのです。

脳細胞はシナプスといいます。神経と神経の接合部です。
そこが活動するということは脳神経の活動をさします。
人間の脳には1000億あるそうです。
生後2~3ヶ月から急激に増えて、1歳までに1.5倍になる。
あらゆることに対応できるだけの能力を持っていて、自分に必要ないものはどんどん失われていく。そうして将来に備えるんですね。

だから、最初の一年間でどのように過ごすかが重要になってくる。
今年の1月に新春対談で福原愛ちゃんが谷村新二さんと対談をしている。愛ちゃんは卓球ばっかりやっています。10歳上にお兄さんがいて、お兄さんも卓球をやっていたんだそうです。近くの家をかりて卓球場にしていたそうです。ヨチヨチ歩きになった頃からおにいちゃんのところにいって、ガラス越しに卓球場をみながら、あそこに入って一緒に卓球がやりたいと思いながら生活していたそうです。
ヨチヨチ歩きだから邪魔にされるんだけど、入れて欲しくてたまらない。で、やっと入れてもらったら一生懸命やるんですね。3歳から選手として卓球をしていたそうです。でも3歳だと卓球台に届かないので、サーブに苦労したといっていました。

ですから最初の1年間卓球が将来必要だというシナプスが成長したんですね。普通の人は将来卓球が必要だと思わないので、その能力は落ちていきます。最初の一年間にいいシナプスいっぱい残して悪いシナプスをなくしていくといういい例です。

タイガーウッズっていますね。物凄い選手です。
彼はグリーンの向こうに穴に向かってコンとうつとコロンと入るんですね。やっぱり優秀な選手は違う。入るはずないと思うんだけど、それが入る。次のホールに行っても入る。偶然にしては…ということになります。その次も入ります。三回続けて怒ることは偶然じゃありません。必然なんです。タイガーウッズは遠くからボールを打って入るのが必然です。10球打って8球入る。ほかの優秀な選手は逆ですよね。入ることもあるけど、大概はずれますね。外れるほうが必然です。

もう必然が違うんです。勝負にならない。
多分タイガーウッズ、両親はゴルフが好きだったと思います。
生まれてからも、ご両親のゴルフの話を聞いていたのではないかと思います。ボールを触ったり、やっている姿を見たりして、3歳からゴルフしています。最初の1歳の環境は、将来ゴルフが必要な環境だったのです。だからタイガーウッズはあれだけ勝負にならない。
5~6歳までゴルフに関係ない生活でも、うまくなることもあります。

でも、最初の1年間のシナプスないんですからね。持っている人と勝負になるはずがない。宮里愛っていう選手もありますね。彼女にもお兄さんがいます。お兄さんが1歳の頃は、ゴルフに浸っていたと思います。しかしその次の次男の頃はもっとゴルフに対する生活環境が整っていたはずです。愛ちゃんが生まれたときは、もっと整っていたと思います。だから、3人目では愛ちゃんが一番優秀なんですね。お兄さんはかないません。

10代20代でやったっていい選手になれないんですよ。日本代表くらいです。ご両親が熱心であれば、いいところまでいきます。そういう実験がNHKで1月16日にもやりました。今度うちでうまれた赤ちゃんが4ヶ月のときに、マタニティビクスでお母さん同士が友達になるじゃないですか。ですから、生まれた後、同じ頃に生まれた子達を集めるんです。で、5~6人の赤ちゃんが来いるんです。それぞれ遊ばせる。その子はハイハイもできなかったんですが、中にはつかまりだちして歩いてくる。翌日にははいはいできるようになったんだそうです。集めて同時期の子供同士を交流させると途端にあることが出来るようになる。そういうことはいっぱいあります。
だから、できるだけ早い時期に子ども同士で交流させるのはいかに能力を高めるかということも証明されているんですね。

公園デビューじゃ遅すぎます。2~3ヶ月から。だから出産後必ずうちでは産後クラブとしてみんな集めて写真撮ります。物凄く可愛いんです。で、隣に似たようなのがいるなっておしくらまんじゅうさせる。それだけで刺激になるんですね。赤ちゃん同士の交流が赤ちゃんの能力を非常にアップさせる。初期が如何に大事か。それをみなさん覚えて帰って欲しいですね。
Q.マタニティビクスはいつまでやっていいんですか?
A.出産前日・当日でも大丈夫です。人間は直前まで走っていたわけですから、大丈夫です。それで早産ということはありません。
よく予定日をいくら越えても陣痛が来ない人がいるけれどそういうこともありません。妊娠中に運動しなかった人は、出産日近くなると大儀で仕方がないそうですが、運動しておけば、宅急便のお兄ちゃんをすり抜けて階段を駆け上がったりもできます。それくらい違います。もともと体力がなくても大丈夫です。妊娠前に慣れ親しんでいたスポーツを7~8掛けてやりなさいという人がいる。妊娠前に運動しなかった人が急にしたらだめですよ、という。
それは違います。
赤ちゃんの能力がアップしますからやった方がいいにきまっている。
8掛けというのもちょっとちがう。スポーツはいけません。
運動は妊娠中の生活を楽しくするため、体力をアップさせるためです。スポーツはそれ自体を楽しむためにやります。運動療法とスポーツをわけて考えないといけない。慣れ親しんだスポーツを軽くやってもいけない。慣れ親しんでいても、妊娠したらそれをやっちゃいけないんです。たとえば球技は一切ダメです。ピンポンでもやめたほうがいいと思う。なぜかといえば、相手がいる。今具合悪いなと思ってもつい無理してやめられない。また、無理な姿勢を瞬間的にとるものがある。そういうものはよくないですね。
全身の筋肉を満遍なく使って運動強度があまりつよくなくて、持久性の酸素をつかって脂肪を燃やす、エアロビックな運動がいいのです。瞬発力も少しはいりますが、基本的にはいらない。
スポーツは瞬発力、球技は相手が要る。相手がいなくても、スキーなんかはやっぱりすすめられない。7掛けでやれば転ばないからいいだろうというけれどそれもダメです。物凄くうまくても、休んでいるときなんかに初心者が突っ込んでくるかもしれません。ぶつかった方は怪我しませんが、ぶつかられた方は怪我します。そういった意味でも、スポーツはやっぱり勧められません。ですから全身性の持久運動だって、公園を走るのはいいけど、一人だと心配なので、みんなで集まって一緒にわいわい楽しくやった方がいいですよ、と思う。だから、ご主人と走ったらいいんじゃないかと思います。
Q.水泳はどうか?
A.身体を冷やすから、ということはありませんが、髪がぬれますから風邪ひく可能性はありますね。
でもマタニティスイミングはありますね。その限りは安全ですが、効果は地に足をついているほうが同じ時間を使うなら効果があります。私がマタニティビクスを作る前に出来ました。プールで室岡教授がマタニティスイミングを開発し、僕も学びました。しかし、室岡教授が開発中割合早くに癌でなくなっていて、その後研究がストップしてしまい発展していません。その頃、5ヶ月(16週)から始めなさいということになっていたんですが、僕は13週からでマタニティビクスをすすめています。その後、スイミングの方も13週からということになったようですが、水深もかんけいないんですね。
泳ぐってことより、水中で脚をつけて、マタニティアクアビクスのほうがいいと思います。その後、マタニティスイミングはばらばらになっているようなので、レッスン内容はまちまちです。
昔水中座禅なんていうのもありましたが、あれは何にもならない。
負荷が加わってよくない。ぶくぶくして息を止めるんですね。いきむときの息詰め練習だそうです。どんどん泳がせるところは多少効果があるでしょう。マタニティスイミングもいいけど、どうせやるならマタニティビクスだと思います。

今ヨガ流行っていますよね。しょうがないので、マタニティヨガってやっています。アフタービクスというのもあります。ヨガってつけるとお客さん来るんですよね。スタジオいっぱいインストラクター雇ってやっています。ベビーヨガなんていうのもある。馬鹿な話ですが、くるもんですから。赤ちゃん逆さにしたりするんですよ。赤ちゃん逆さにしちゃよくないと思うんですけどね。アメリカでヨガが流行ったのでね。マタニティビクスのほうがいいと思うんですが、ヨガの日もあります。悪くはないですよ。でもストレッチみたいなもんですよね。パワーヨガなんてヨガと全然関係ない。オーバーストレッチングはよくないなんていっているのに、まさにそれなんですよ。
よがって言うのはホントはインドでうまれたんですね。で、精神統一っていう、気の流れや呼吸法なんですね。だからほんとのヨガは猛暑の中で生まれたんですね。あんな厚いところでジョギングやったらぶっ倒れて死んじゃいます。逆にソ連で花のポーズなんてやったら凍っちゃいますよね。だから、ウォッカ飲みながら動くのが健康にいい。それぞれの土地にあった健康法なんです。
だから、日本にもヨガ入って来ても、本質がちょっと違うものが流行っている。ろうそくつけて一点を見つめて呼吸を正し、精神統一するのがヨガです。あんまり動かないんです。日本で動かなきゃいいんですが、ソ連で動かなかったら凍っちゃいますからね。日本には日本の気候風土にあった動き方があるんです。日本て山が多いでしょう。あれが有酸素全身持久力です。階段の上り下りも脚にとてもいい。
良心の呵責に悩みつつも、お客さんがくるので、やっています。ヨガ。

標準体重というのがあります。身長と体重をどうこうして、計算機が必要ですね。25以上が肥満で、18以下が・・・といわれてもぴんと来ない。もっとアバウトで簡単に計算できる方法が、身長から100をひいて、日本人だったら0.9をかける。アバウトでいいです。精度なんかいりません。ごはんいっぱい食べる前か後かで随分違いますよね。計算しやすい方がいい。160センチなら54キロです。
標準体重よりちょっと少ないくらいなら、一番長寿です。標準体重よりも20%多すぎたり少なかったりすると問題です。
それまでは正常範囲。多すぎたら肥満症、少なければるいそうといいます。最近は痩せすぎている人が多い。痩せすぎているのはよくないです。ただ、今美の基準が痩せに偏って、標準体重がデブということになっています。そんなことない。食料がなかった時代は太っているのが美しかったんですよ。太っているって言うのはステータスだったんです。下半身デブが美人ということだった。
今みたいに食料が多くなると、太るのはみっともないということになる。細くて服を着て得意になっている。昔だったら消化吸収して脂肪に蓄えられないのなら子孫は残せなかった。食べたら食べるだけ太るのはいいことだったんですね。太りすぎは出産時には難産を招きますがね。だから、一杯食べて、いっぱい運動していっぱい出す。
出し入れの問題です。いっぱい入れて出さなければ太ります。
それだけです。入れて出せば標準体重より少し痩せるように出来ています。こういう人は安産の体質です。
標準54キロだったら52キロくらいなら、理想的な生活です。
食べ物は制限しちゃいけない。「太っちゃいけない」の誤解があります。だから、アレコレ制限させたりする。もうだめです。ストレスになるだけです。ストレスなく過ごすために、よく食べ、よく動くことがいいんです。

赤ちゃんも精神を持っています。
お母さんが悲しければ、赤ちゃんも悲しい気持ちで育つ。お母さんが楽しい、嬉しいと思えば赤ちゃんもそれがわかりますから。恐怖映画を観たりすると、赤ちゃんも怖い思いをします。お母さんの精神状態と赤ちゃんの精神状態は一致します。そこからだんだん独立していきます。制限は一切いりません。太っている人が運動をすると、出産後痩せていたりする。今標準体重より少し痩せている生活を心がける。それが大事です。
食べても食べても太らない人は、昔だったら生き残れませんでしたからね。

美の曲線は女性の身体の曲線から来ています。なぜ男性はごつごつ、女性はたおやかな曲線かといえば、脂肪を蓄えているからです。
そしてそれは妊娠出産のためです。だから、17~8の子がダイエットします。みんな生理止まります。せっかく蓄えたものがなくなるからです。日本人は42キロ越えたあたりで生理がきます。
18%を超えた、というところで、この人は赤ちゃんを育てられる身体になったよ、と生理が始まるのです。体脂肪率が23~4%くらいの若いお嬢さんがダイエットして7キロとっちゃうと、今妊娠したらまずいよっていうんで生理がストップする。脂肪って大事なんですよ。
皮下脂肪がなければ赤ちゃんを産み育てられないからいけないんですね。
妊娠中も、痩せすぎていたら育たないし、太りすぎたら中毒症になってしまう。
妊娠前から運動して標準よりちょっと痩せくらいで。マタニティビクスは13週からということになっている。内臓や神経ができあがるまでは安静にしたい。この時期病気を貰って高熱を3日連続で出したりすると、奇形が生まれる可能性が高くなります。
13週前でも運動してもいいんです。だからそれまでの間はやってもいいんですが、病気をもらうなど、大勢のところでわざわざ危険を冒すこともないので、この時期は人には接触しないように。しかし安静にはしない。これが大事です。難しいですね。
Qベビーマッサージってありますが?
A.あかちゃんと語りかけながら、視線をあわせながら、ゆっくりマッサージしてあげる。今ベビーマッサージっていろいろな派があって、悪いこともしていますよ。ベビーマッサージを取り入れたのはうちが早いです。オイルをつけても、何もなくてもできます。
赤ちゃんにもいいアロマもあるでしょう。
うちはアロマの研究をしてないのでやっていませんけどね。
妊婦さんに悪いアロマもあるんだと思いますので、僕は深く知らないけれど、いいものを選んでやってほしいです。
Q産褥体操とは違うのですか?
A.産褥体操は昔妊婦さんがやっていたけど、効果ないんですよ。
だから僕はアフタービクスというのを作った。昔妊婦さんにとって、あぐらをかいて3回呼吸しなさいとかあるんだね、でもそんなの意味ないよ。うちではお産した直後から、アフターバースプログラムがあります。退院したら6週間からアフタービクスやっています。
産褥体操もやりますけど、昔のものとはちょっと違います・
Q骨盤筋リハビリはどうでしょうか?
A.うちでもアフタービクスで筋を回復させる、お尻を締めるような運動を入れています。ゆるんじゃって伸びちゃったり尿失禁おこしたり、いろいろあるんですね。そういったトラブルのケアをすべて含めてアフタービクスとしています。早くやった方がいいんですが、その頃の赤ちゃんはしょっちゅう寝て起きておっぱいを欲しがる。
お母さんも眠いんですね。6週くらいだと、来いって言えばなんとかきてくれる。4週位したら子宮は元に戻る。重心なども徐々に戻ってくる。

Q悪阻があっても大丈夫ですか?
A.悪阻があっても大丈夫です。だいたい、悪阻がひどい人でも、ちょっとよくなったときに、立て続けに3回マタニティビクスにくると、治ります。運動を是非やってほしい。
あとね、悪阻がひどい人は、旦那の顔を見るとひどくなるそうです。だから、そういう場合は実家に帰るのがいい。なんででしょうかね。精神的なものなんだと思います。だいたい、悪阻のひどい妊婦さんの旦那は凄く優しいです。昔の男っぽい人の奥さんで悪阻ってあんまりいない。ほっとかれるような人はね。旦那が優しくなって悪阻がひどくなった。
Q保険は適応されますか?
A.されません。だんだん運動療法は保険化されていくかもしれませんが、まだそこまで行っていません。でも、身体のこと考えたら安いものですよ。
Q無痛分娩についてお伺いしたいのですが…
A.お産は物凄く痛い。めちゃくちゃ痛かったはずなんです。今なら、大したことなかったという人もいますけどね。
痛い〜と言われていたので第一子は予想の範囲内でした。その後の処理の方がつらかった。二人目は砕けるかと思いました。みしみしいいました。
砕けると思うのは大体普通ですね。なぜかって言うと、生理現象じゃない。みしみしというのは、靭帯が切れる音ですね。
昔は痛くて障子の桟が見えなくなったと言った。見えなくなった頃にようやく生まれたっていうんですね。
母体が痛むか、赤ちゃんが痛むかで生まれてくる。
赤ちゃんが損傷をうけなければ、母体が損傷をうける。めちゃくちゃ痛くてあたりまえです。痛くて初めて愛情がというふうに考えたければ考えればいいけれど、お産だけ特別痛いときにだけ我慢して、それ以外は快適な生活です。夏が来れば冷房、冬は暖房、乗り物があって、グルメがあって、エンターテイメントがある。決して自然な生活していません。それなのに、めちゃくちゃ痛いお産だけ自然に任せるなんて馬鹿らしい話です。こここそ医療の助けを借りればいいじゃないですか。普段から自然に即した生活をしていれば、痛みへの耐性もあるでしょうからわかりますが。不自然です。
お産を自然にさせるなら、普段の痛みくらい我慢しなさいよってことです。人間の尊厳を保てないような痛みだけひたすら頑張れなんてめちゃくちゃな話だと思いませんか。
19世紀イギリスでは既に無痛分娩が自然だったんです。200年前です。先進国で日本だけなんです、やってなかったのは。

お産に適している麻酔は硬膜外麻酔といいます。
彼氏のお母さんあたりが反対します。自分は無痛分娩やりたいけど、お義母さんが反対する。ひとつには理由があって、ご主人のお母さんの時代の無痛分娩ってよくなかった。日本に麻酔が入ったとき、産婦人科の先生が全身麻酔を始めちゃった。意識がなくて、あかちゃんも眠っちゃう。そういう悪いうわさが30年くらい前に流れましてね。それで、反対される。赤ちゃんが仮死で生まれるって。

”McGill疼痛質問表を用いた場合の疼痛尺度”をご覧ください。

これくらい痛いんですよ。めちゃくちゃ痛い。わかりますよね。
麻酔の種類ですが、全身麻酔と局所麻酔。全身麻酔は意識がなくなります。飲み薬や吸引式、どちらも、意識がなくなると嚥下反射が鈍くなって、胃の内容物を吐いて器官にはいっちゃったりする。
それで亡くなる人もいる。全身麻酔はよくないんです。

それでも最初に始めてしまった。僕が卒業した頃に、麻酔科ができた。それまではドイツ医学でした。ドイツ医学では、外科の先生が腰に麻酔を打ってというものがポピュラーでした。一方アメリカは、麻酔科が出来るほど、麻酔が発達していました。戦後アメリカが入ってきて、麻酔学が出来た。
私はその頃外科医でした。産婦人科医だけはなるまいと思って卒業したんですね。
なぜって、父が産婦人科を開業していたんです。
夜中にどんどんどんと起こされて、ふくれつらしながらでていく後姿をみているでしょ? もう産婦人科だけはいやだなぁと思って。
患者さんにはできないけど、家族にはふくれっつらででていくわけです。で、その頃外科医がかっこいいなって3年ばかりやった。
苦痛にうめくのを助けるのはやりがいがあるなと。で、麻酔科が出来た。医学部でてから3年も経ってのこのこ学校に行く人なんていなかったけど、麻酔科の試験をうけて、麻酔の大学に入った。
麻酔で学位とって、4年後、麻酔のチューターやって5年間。麻酔医だった。今みたいにペインクリニックってなかったですから、一生懸命頑張っても、成功したら主治医の功績なんですね。
裕次郎、手術に耐え抜いた! 頑張った! なんて記事がありましてもね、麻酔医から言わせれば「俺が頑張ったんだよ!」ってことになります。
患者さんは寝ていただけですからね。
麻酔医がいるなんてことも知らない時代ですから。つまんないんです。で、親のあとついで産婦人科開業できるように2年ばかり産婦人科の勉強をした。
麻酔医時代より、明るいし患者さんはきれいだしおめでたいし喜ばれる。やっぱりいいなーと思いましてね。でも、やっぱり夜間はたたき起こされる。それはやだなぁと思って、なるべく昼間のお産にしようとおもいました。計画出産っていうのを考え付いたんです。

麻酔医だった当事、笑気酸素で全身麻酔をして産婦人科をみながら、アメリカは硬膜外麻酔なのにな、と思っていました。弛緩しているので、お産も長引くし、出血も止まらなかったりする。

その頃のあんまりよくなかったのと、無痛分娩なんて悪いことしているような気がするんですね。でも海外では無痛分娩が当然です。
痛みだけをとり、筋肉は弛緩させない麻酔、が求められます。その都合のいい麻酔が硬膜外麻酔になります。アメリカではもう40年位前から硬膜外麻酔に切り替えています。心臓病・糖尿病・重度の肥満・高齢出産などはハイリスクです。高齢の場合は運動すればハイリスクではなくなるんですけどね。危ないお産は無痛分娩したほうがいいというなら、硬膜外麻酔をかけたほうがいい。
しかし、日本の産婦人科のお医者さんがみんな硬膜外麻酔できるわけじゃないですからね。全員が全員受けられるわけではないです。
しかし、みんながみんなやりたがっていくと、技術の甘い人が出てきます。産科麻酔のちゃんと出来る人のところにいって欲しい。
開業医の人たちが全国から着ます。そういう人にはきちっと教えてやるから事故も起きない。お産って痛いと精神的に参りますよね。
あんまりひどいと胎児にトラウマになって残るわけですね。そういったものも軽減されます。
血流もよくなるから、産道の伸びがよくなる。胎児のストレスを軽減します。急に帝王切開などになった場合も、既に麻酔がかかっていますから、少し濃い目の麻酔を追加すればすみます。
よく、総合病院に行ったほうが安心だなんていいますけど、実際は「うちではこの検査受けてからじゃないとこの麻酔は打てませんから検査してください」「担当看護婦がいません」「オペ室がいっぱいです」なんてことになる。結局時間が掛かっちゃう。耳鼻科の手術があるので~なんてことになる。だから、専門の産婦人科の方がいいと思います。大病院の方が精神的安心を感じるのでしたら、そちらの方がいいと思いますが、内容的にはおススメできません。

イギリスではビクトリア女王が無痛分娩の体験第一人者です。女王様がやったんだからいいんだろうと盛んになりました。しかし、3%が死んじゃったんです。
これはいけないということ1946年に硬膜外麻酔に切り替えました。
日本には1970年代に全身麻酔の無痛分娩がきました。
93年に私が産婦人科になって、最初に採用したのは硬膜外麻酔です。
まず、この硬膜外麻酔、全身の手術にも使います。
背中、腰に入れて、入れる場所によって作用する範囲が違う。薬の量が増えれば、その範囲は広がる。濃度が濃ければつよく麻痺します。
これを分節麻酔といいます。そういう調節性があって、全身にできるわけ。たとえば全身の手術につかます。手術のときも痛いですが、切ったあとも痛い。脊椎麻酔でやった場合、脊椎麻酔が切れちゃえばもう痛いんですが、硬膜外の場合はカテーテルを入れてあるので、そこにお薬を入れれば麻酔が簡単にきく。術後の管理に使える。
また、癌の人も、死ぬまで痛かったりする。
だから、硬膜外カテーテルから、少しずつお薬を入れて、痛みを和らげることが出来る。
モルヒネという薬は半日くらい痛くない。それをずっと月に一回くらいチューブ交換してあとは死ぬまで痛みをとってあげることが出来る。
それが可能になったのが、硬膜外麻酔です。
帝王切開も、筋肉が弛緩しない方がいいので硬膜外麻酔でやります。

脊髄はくも膜・軟膜・硬膜というものに覆われてるんですが、その中に神経が通っています。脊椎突起の間に針を入れて、硬膜の外側、4ミリほどの部分に針を刺してお薬を入れる。
運動神経は前の方にあり、痛みを感じる神経は外側にあります。
ですから、運動神経はあまり麻痺せず、痛みだけをとることができます。ですから、お産の場合硬膜外麻酔が都合がいい。お腹の張りも、何かが詰まっている感じもわかります。さらに奥に針を入れてしまうと、いきむことが出来ない。しかし難しいんですよ。4ミリ程度ですから。日本人は手が器用ですから、こういったことは得意です。私もやりますが、あんまり失敗したことない。
麻酔医は忙しいから、産科麻酔に興味を持つ人はいないんです。しかもお産のことを詳しくならないといけないから。ごく少しの麻酔医と、産科医が居るところがやっている。だから、少ないんです。
しかし、どんな医療にも、リスクはあります。
ごく症例ですが、合併症もありますが、ここでは省略させてください。
詳しくはホームページに載っています。
http://www.tanaka-wc.com/

出産予定日というのは、排卵予定日を計算して算出するのですが、かならず最後の生理から2週間後に排卵する人なんていない。少しはずれているんです。
だから、予定日って言うのはアバウトなんですね。
正確であっても、きちっとした予定日に産まれることが必ずしも正しいわけではありません。1週間前後でもよい赤ちゃんも居ます。
だいたい総合すると、予定日頃ちょうどよく生まれる赤ちゃんが多い、というだけの話です。
うちでは、書いてある予定日ではなく、この妊婦さんはいつ頃出産に入りそうだ、というのをみて、明日から陣痛始まりますよ、という日ににこにこして入院する。だいたい朝方陣痛が始まるので、前日にカテーテルを入れます。軽い陣痛がきたら、麻酔を始めます。
食べたりもできますが、安全のためにあまり食事はおススメしません。
ただでさえ子宮収縮で押されるので、胃腸も影響を受けますし、心配事があると食べ物を消化しない。溜まった状態になります。
吐く材料になってしまうので、やっぱり食べない方がいいと思います。そのかわり点滴を入れます。
これはもうひとつ、血管確保というメリットがあります。出産時に大出血でなくなる場合があります。なんでもなくても大出血は起こります。
1000人に一人くらいは居ます。出血が始まってから、輸血のために血管を確保しようとしても、血管が逃げてしまい、結果輸血が出来ないということがあります。
それが一番怖い。
ですので、点滴を入れるというのは、万一に備えて輸血も可能な状態の確保という側面もあります。抗生物質も強心剤もすぐにいれられます。その場合は出血していようとゆうゆう助かります。
これは天地の差があります。医療の助けはなるべくあったほうが、やはり不自然であっても安全です。
安全性を重視したければやりましょう、ってことです。自然さを大事にするあまり生きるか死ぬかという目にあう必要は、ないように思います。
赤ちゃんが死んでも妊婦が死んでもかまわないというなら自然分娩がいいと思います。あれは安全性がおちます。
危なくなってから、15分で対応できれば優秀です。
自然だったら、関連病院に連れて行き、お医者さんがみて、麻酔を入れて…というのは時間が掛かると思いませんか?
そのためにモニターがいっぱいついていても、起こりうるあらゆる危険に対応できる方がいいと思います。
10人に一人くらい痒くなったり、麻酔を入れるカテーテルに違和感を感じる人もいる。
けれどもお産の痛みに比べたら1000分の一、万分の一です。
今は少量の薬を少しずつ入れて、切れる前にまた少量を追加するという方法です。
胎盤を通過することもありませんから、赤ちゃんが眠ることもない。
赤ちゃんの悪影響を心配して、麻酔を拒否する必要はまったくありません。
麻酔の有無を比較をして、差はないということもわかっています。
むしろストレスも軽減できますから、よいところばかりだと思います。

最新の麻酔機をペイシェントコントロールエピデュラルアネステージアといいます。
エピデュラルアネステージアは硬膜外麻酔という意味です。
フランス人はみんなエピデュラルという言葉を知っています。
ペイシェントは患者さん。
つまり、患者さんが痛いと感じたら、自分でボタンを押して、都度少量ずつ麻酔が入るようにコントロールできる機械です。
しかし、痛がってボタンを連打しても、いっぱい入ることはありません。一回押したら15分間は出ないようになっています。
それがPCEA。
だから、間歇的に低濃度のお薬を少量ずつ入れていくことが出来る。
あんまり痛がる人は、少し強めにお薬を作るので、脚がちょっともたっとしたりしますが、普通の人ならそんなこともありません。
ここ5年の安全性を示したグラフもあります。
双胎は少し早いのですが、単胎でしたら、39週0日目に出産するように計画しています。その辺はこちらで見て判断し、希望の日を3つくらい出してもらいます。赤ちゃんにとってよくなければダメなんですがね。
そういう計画出産なんですね。お産てだいたい夜の方が多いんですね。診療時間て書いてある。だから診療時間にくるわけですね。
1年間時間があって、診療時間は全体の19.8%。
こんな人工的な要素がなければ、満月の日に出産が多く、引き潮で人がいっぱい死んだんだと思います。今は死亡理由も、ばらばらなら、お産もばらばらなんです。年間お産があったら8割は時間外なんです。みなさんのお友達で10人お産した人に、何曜日の何時に生まれた?と訊いてみてください。
おそらく10人中8人は診療時間外に…と答えるはずです。お産は大概夜中です。それで計画出産を考え、それでも6割です。
結局、年中無休と同じなので、年中無休って書いたほうがお得なんですよ。だから、うちは年中無休にしちゃった。
それでも33%なんですよ。ほっとけばやっぱり夜中に生まれる。
勤務時間内のほうが安全に決まっています。当直態勢といって、入院している人のお世話をするだけです。新しいことをする態勢ではありません。お産なんて緊急医療と同じようなもので、安産であればいいですが、それこそ大出血なんてしたら大変です。赤ちゃんが弱ってるから危ない。
勤務時間内のほうが断然安全です。だから、日中のお産の方が安全なんです。なるべく昼間うみましょうねって私の健康と、赤ちゃんのために言っているんです。明け方陣痛つけて昼にお産する、と。
私の読みが半日違って、前の日に陣痛がついて、明け方生まれる人もいる。だから、6割なんですね。
それが私の計画出産です。
鈴木.田中先生、本日はほんとうにためになるお話をありがとうございました。(一同、拍手)

田中.いいえ、こちらこそありがとうございました。

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